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高森明勅
2018.5.18 22:00

文春新書『元号』は訂正が必要

文春新書『元号』(所功氏他)に「平成」への
改元を巡り以下の記述がある。

「(昭和64年1月7日午後)1時50分から
全閣僚会議(事務方も入る)が開かれ、
さらに2時10分からの臨時閣議において、
新元号は『平成』
と決定された。

そこで石原(信雄)官房副長官は直ちに
宮内庁長官の藤森昭一に電話を入れ、
長官から新天皇に『新元号は平成』と報告」と。

これが事実なら、天皇陛下の事前の「ご聴許」は無かった事になる。

つまり“大化”以来の「天皇の元号」という伝統は決定的に喪われ、
内閣の元号」に変質したという事。

ところが、宮内庁に連絡をしたご本人である石原信雄氏の証言では、
そうではない。

間違いなく、閣議の前(!)に天皇陛下にご報告申し上げている
(『週刊ポスト』
平成25年12月6日号、時事通信平成30年
5月5日8時22分配信記事他)。

勿論、同氏の証言を疑う合理的な理由はない。

従って、やはりご聴許は“あった”と理解できる。

というより、ご聴許の為に事前に連絡したとしか考えられない。

あの時、元号の本質はギリギリ守られていたのだ。

言う迄もなく、次の改元の際にも、
この点は決して蔑(ないがし)
ろにされてはならない。

専門家の手になる時宜を得た著書の中で、
まさに元号の本質(!)に関わる記述が、
当事者の証言と齟齬しているのは残念だ。

重版の際には訂正される事を望みたい。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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